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彼方のうたのkeecoliquoriceのネタバレレビュー・内容・結末

彼方のうた(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「光のうた」「春原さんのうた」から、「ひとつのうた」は後追いで、観てきた杉田監督作品。

TIFFにて。

アフタートークに杉田監督と、出演者の眞島秀和さん。杉田監督の、大学の卒業制作に出演した縁から20年来のつながり、とのこと。

眞島さんが、出演しての思いを問われ開口一番「とにかく優しい空気に満ちた現場。汚れた自分を思い知らされ、恥じる。演技のたくらみはいっさい持たず、そこにいる人たちとただ存在していようと思った」というようなことを仰り、

鑑賞者である私も、そうなのです…!と心の中で叫んだ。

行間ありまくりで、私たちの目と耳はじっと映画に向うしかなくなっていく、が、それがどんどん心地よくなって、杉田監督の、途切れない物語の流れに私も浮かんでいく。

会場からの、前作との繋がりをどう意識されているか?という質問と、背中をじっと撮ることが多いが?という質問に答えていわく、共通して仰ったのは、

どこまでも広がる、続いていく人々の生活の、いまこのときを捉えていて、その外には常にずっと続いている。捉えたいそのとき=映画、に、人や物の「正面」というのはないと思っていて、カメラがその〝とき〟を捉えるのにここだと思ったところでただ撮っている、それが背中のこともあるわけで、撮影の飯岡幸子さんの感覚が多分にあるのだが、飯岡さんに「背中からのショットが多いですね」と言っても、心の底から真顔で「え?」とかえってくる。まったく自覚がないから。

とにかく、汚れた自分を恥じてハッとして、川の音にただ耳を澄まし、じっと佇む人に心をそわせる。本当に邪心のないこういう映画をつくれるのは杉田協士監督しかいないのではないか、と思う。アフタートークでの言動を通して、更に思うのである。いつも。
杉田監督の映画は私に、世界に、必要だなと。
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