矢野竜子

彼方のうたの矢野竜子のネタバレレビュー・内容・結末

彼方のうた(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

何かが欠けてしまい世界から
切り離されてしまった人たち。
それを世界と再び繋げるものは一体なにか。
バラバラの点となり世界から離れてしまった
人たちを再び世界と接続する線のような
役割を果たす主人公。
線の主人公は絶えずどこかに移動する。
カセットテープは記録(結果)であり痕跡。
そこに記された音を
主人公と女性は辿っていく。
そこには世界の再接続が描かれている。
一方で料理を一緒に作ることと
映画制作のワークショップも
世界との再接続を促している。
ただこれらはカセットテープとは
接続の仕方が異なっているように思う。
料理も映画制作もある過程を共有しながら
一緒に記録(痕跡)を残していく。
つまりはカセットテープとは逆のイメージ。
過去の線を辿っていくのと
現在の線を繋いでいくイメージ。
そんな線の役割を果たす主人公が
雑踏の中でただ佇む終盤が印象的。
今度は自らが点となってしまった主人公が
世界と再接続するラストに胸打たれる。