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陽炎座 4Kデジタル完全修復版のいののレビュー・感想・評価

4.5
【初見時の感想】
これは、鈴木清順によるインランド・エンパイアか? それとも、インランド・エンパイアはリンチ版陽炎座? そう思ってしまったのは中盤でしょうか。そこからアタシはめちゃくちゃ楽しくなっちゃってニヤニヤがとまりませんでした。願望充足のためにみる夢。そうであって欲しいと願うもの。何層にもわたる意識下の願望が、自由自在に飛び跳ねていて実に爽快。有難すぎちゃって観客は皆神妙にかしこまって拝見していたように感じたけれど、笑ったりしながらもっと自由に観てもいいんじゃないかなって思いました。


冒頭から、うわっ、松田優作だぁー。松田優作が出演していたことも知らずに観に来てしまったからごめんなさいだし、冒頭から推定20分くらい自分自身の夢の中にいたからそれもごめんなさい。清順監督の描く世界から、やっぱり私は陰鬱や陰湿なものを感じない。生と死が混じり合っても、エロスが充満していても、とても健全な印象を受けます。コンプレックスとか屈折した心持ちとか、そういうのと手を結ぶことなく生きてきた方のように感じるのは、わたしの勘違いなのかどうか、レビューupしたあとで確認してみるのが楽しみです。


【再鑑賞時の感想】
人形を裏返して見る世界。裏返すことを通してしか見えない世界。わりと最初からお墓がよく登場していて、○△□は五輪塔(あるいは三層?の供養塔)を意味するのかなと思いました。足元を暗くして足元を見えないようにしている場面も多く、立っている松田優作ら演者は最初から死後の世界にいるようにも感じられます。赤いのは菩薩像?で黒いのはなにか憤怒の像?の扉が回転するのも、いろんなものが混在して、観る者の見え方次第で変わっていく世界に惹きつけられました。六道の辻、とか、空蝉とか、いろいろ気になるワードもいっぱいあって、このあとゆっくり調べてみたい気持ちになる。歌舞伎と浄瑠璃の合体のような、春画となにかの合体のような、とにかく圧巻に次ぐ圧巻で妥当な言葉を見つけることができません。情念やら怨念やらあるけれど、やっぱり明るく描かれていると思うのは、松田優作とか原田芳雄とかの漲る生命力があるからなのでしょうか。



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映画館では『夢二』→『陽炎座』→『ツィゴイネルワイゼン』の順に観て、三作みたあと自宅で『ツィゴイネルワイゼン』→『陽炎座』→『夢二』の順で鑑賞。
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