ツクヨミ

陽炎座 4Kデジタル完全修復版のツクヨミのレビュー・感想・評価

4.3
目眩く誘われる夢の多重螺旋と官能.鈴木清順は煮詰まったフェリーニ?
特集"鈴木清順 SEIJUN RETURNS in 4K"にて鑑賞、予告編にて異様な雰囲気を放っていた鈴木清順作品に挑んでみた。
まずオープニング、奥行きを感じさせる人と背景の構図がキマッたファーストショットが美しすぎ、すると向こう側から謎の美女がやってきて松田優作とヘンテコ会話を繰り広げる。そんな雰囲気でいつのまにやら教会らしき建物へ突如変わったりと初っ端なんのことやらわからないテイストにかなり困惑、ああこれはなかなか一筋縄ではいかないぞとなりつつすげぇ編集とビジュアルに魅せられた。
まあ本作、大正期の東京を舞台にし女に魅せられた男の話というぐらいしかわからないストーリーを語らないスタイルだ。なんのことない会話が続き夢のようなシークエンスが重なっていくわけわかめさ、フェリーニの"8 1/2"をさらに煮詰めた感じは"ビデオドローム"とかのクローネンバーグに通ずるが、独特の大正ビジュアルと構図美.歌舞伎のような会話などなどこれが"清順美学"だと高らかに宣言するようなえぐみに溢れすぎていて死にそうになる。
いやまあなんという編集スタイルか、"8 1/2"のカットを割らない回想移行を踏襲しうまいこと滑らかに幻想か夢かのシークエンスへ移行していくカッティング。"狂った一頁"が如くぐちゃぐちゃにカットバックする狂おしさ、今見ているのが夢か現かもわからず時系列すらもわからなくなる言いようもない映画体験、カルト的な雰囲気にクラクラしつつ魅せられる。
そして構図がキマッたビジュアルと謎のスローモーションがまた美しい。小津とはまた違う浮世絵風構図と編集が映えまくるスローモーションはまさに唯一無二、本当に訳がわからない映画なんだがなんかまた見たくなりそうなカルト要素、一発目でめちゃくちゃ心酔した鈴木清順体験だったなぁ。
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