矢吹

クオリアの矢吹のレビュー・感想・評価

クオリア(2023年製作の映画)
4.0
そんなのニワトリだけじゃないでしょ

エンディングの曲、洋楽というか、記憶では、フランスの可能性もあった、「Rails」byナポリタンなんたら。みたいな人。
誰か詳細知ってたら教えて欲しいです。切実に。

破壊と構築と破壊と構築と破壊。
嘘と、誤魔化しと、慣れに満ち溢れ環境の息が詰まるための空気。
ガールズバーの、真ん中に座ってた女の子が妙にリアルな、地方都市。
養鶏を営む家族。
自分の意思で何も決められない旦那。
自分の欲がなく何でもいいように見える嫁。
全てを決定する取り仕切る姉。
鶏を愛し鶏に愛されるべき青年。
人に愛されたくて愛に飢えた少女。
家族に隠された過去と、崩壊していく現在。
そして、隠された現在。

セリフの趣がめっちゃ深い。
それぞれのキャラクターが素敵。
何かを聞かれた時に、
喋れない人は、ちゃんと、喋れないし、
わからない人は、わからないって
答える部分とか。
なんか単なる言葉と沈黙じゃなくて、
ちゃんと生き生きとしている、
その人間からしか出てこない必要最低限の言葉たち。

例えば、ニワトリさんの中に、SEXせずに終わる子がいるなんて、可哀想という女の子のセリフとかは、
まさに、あの子の説明にもってこいというか。

あらゆる展開がマジで最悪な悲惨に向かい、その最悪に更なる最悪が上乗せされ続けていく、最高の映画。

養鶏という、食育に近い知識としての面白さももちろんあり、不妊や交配という確かなテーマの繋がりを感じつつ、静かに終末に向かっていくサスペンス性も感じつつ、終わってみれば、なぜこんなにも、ただただ他人の不幸を楽しむ心地良さだけでは届かないほどの、爽やかな心地にだって、してくれるのだろうか。
あとちゃんと笑える。

そりゃどっかいくよ。
ニワトリだって飛ぶほどに、
何が起きてもおかしく無いんだから。
自分以外のことなんてわかりきれるはずが無いんだから。
矢吹

矢吹