みむさん

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのみむさんのレビュー・感想・評価

4.0
アレクサンダー・ペインのちょいコメディのヒューマンドラマは期待どおり。とてもよかった。人間味があふれでていた。
基本は堅物の教師と問題抱えた生徒のユーモア交えた王道的なストーリーだが、時は1970年、ベトナム戦争が陰を落とす。

冬休み学校に留まらざるを得ない生徒達とともに一人の先生も一緒に学校で休暇を過ごす(残留組居残り組=Holdovers)。
といってもまるで冬期講習のように始まるのだけど。
クリスマスは家族と過ごすのが当たり前の環境で学校に残って過ごすのはそれだけでもいろいろ思うことはあるだろうが、彼らなりの事情もある。

それぞれが孤独や悩みを抱えてる、ポール・ジアマッティが演じる歴史教師ハナムと生徒の一人アンガス、同じく教師のメアリーとの正直で飾らない交流がいい。

ポール・ジアマッティのちょっとおちゃらけたような表情と愛くるしい佇まいが見る側を笑顔にする一方、アンガスの両親の不理解や実の父との関係に悩む様子に苦しくなる。
そんなアンガスにハナム先生の言葉がド直球に響く。
ああいうことをしっかり目をみて語りかける先生が世の中にどれだけいるだろうか?
問題のある生徒に対し、その問題の根本に対処しようとする先生がどれだけいるだろうか?

ハナム先生は決してお手本のようでもなく完璧でもなく、オレ流貫き系なので生徒の保護者からはよく思われないこともしたが、それはひとえに生徒を思うがゆえ。不器用だがまっすぐだった。

自身も悩んできたであろうハナム先生が忖度なく目の前の少年のためにかけた言葉。シンプルだったがアンガスのガチガチだった心を開いた瞬間だろう。

終盤は思わずホロッとさせられる。

あと、年頃の娘息子を持つ親には特に(親の姿が反面教師として)響くかもしれない。