鶏

青春ジャック止められるか、俺たちを2の鶏のレビュー・感想・評価

4.8
『”映画愛”と”人間愛”溢れる熱き青春映画』

若松孝二監督が代表を務めていた若松プロダクションを巡る青春群像劇でした。エンドロールの出演者の順番では、若松監督役を務めた井浦新がトップに来ており、確かに本作の中心には若松監督が間違いなく座ってはいました。ただ物語的には本作の監督を務めた若き日の井上淳一を演じた杉田雷麟と、本作の舞台である名古屋の映画館「シネマスコーレ」でバイトをしていた大学生である金本法子役を演じた芋生悠の2人の若者の物語でした。

”青春”なんていつの日のことかと思うほど遠い昔になった世代の私としても、若松監督やシネマスコーレの支配人である木全純治(東出昌大)という若者を見守る2人の眼を通して井上と金本の2人の若者を観られたせいか、”青春”が実に身近に感じられ、心が沸き立つような感動を覚えました。

特に心地よかったのは、登場人物たちの”映画愛”であり”人間愛”でした。若松監督の器の大きさにまずは魅せられ、サラリーマンを辞めてシネマスコーレの支配人になった木全と彼の妻との夫婦愛に温もりを感じ、映画の世界に身を投じようとする井上の両親の息子に対する優しさに触れ、そしてもがきながらも仲間を見つめた井上や金本の純粋さに遠き”青春”の日を思い出すなどなど、どれをとっても観る者の心を掴んで離さないものでした。

あと、映画の内容とは関係ないものの、封切り初日のテアトル新宿で行われた舞台挨拶の回のチケットを、残り4枚のところギリギリでゲット出来ました。劇場は満員御礼。そして上映終了後に井上監督はじめ、井浦新さんや東出昌大さんをはじめとする出演者や、音楽を担当した宮田岳さんに中野ミホさんが登壇され、一層の盛り上がりを見せました。エンディングテーマの生演奏を聴けたのも僥倖でした。

そんな訳で、内容も良かったし舞台挨拶も非常に印象深いものだったので、本作の評価は★4.8とします。
鶏