レインシンガー

青春ジャック止められるか、俺たちを2のレインシンガーのレビュー・感想・評価

4.1
この映画に関しては、みんなもっと褒めようよ、とよけいなお世話をしたい。

人生の目的を見いだせない若者(つまりすべての若者の代表に過ぎないわけだが・・と書くと、すでに「若者」ではない自分としては書きすぎなのか・・まあ元若者として、要するに自分に惹きつけてみるという行為をすると)の恥ずかしさとみっともなさと、それ故のある意味でたらめな行動が、ある瞬間に一点の像を結んでいくという、青春物語の典型であると感じるからだ。

もちろん、主人公が「映画作り」にたどり着くあたりが、映画好きとしては、夢を叶えてくれるようでたまらなく嬉しい。(もちろん、映画好きならたまらないちょっとした情報というか映画知識がちょいちょいさし込まれていて、それだけでウキウキしてしまうのだが)

この主人公、どう見てもいやな奴なのだが、自分もどう考えてもいやな奴なので(と思っている人にとっては痛すぎるのだが)ハラハラしながら見守ることができる。

しかも、キャスト的には主人公は脇役というか「第4主役?」にすぎず、まず若松孝二=井浦新という巨大なマグマ的人物がいて、それに振り回されて、映画愛が強いゆえにミニシアターの看守になってしまう木全=東出昌大がいて、さらにそこに、映研崩れの女子=芋生悠がいて、ドラマは彼らを中心にぐいぐい回っていき、その渦の端っこに呑み込まれるのが主人公という描き方が「青春のちっぽけさ」をうまく表している。

そして、井浦新(ある意味新境地かな)の扮する若松の適当で、しかし、プロの映画屋としての確かな腕と激怒ぶりがこの映画最大の見どころだ。
コンプラ全盛の現在、絶対に許されないような存在だろうが、こんな適当で大きな存在に叱り飛ばされまくった主人公の青春を「幸せだな」と思えた人は、ビルドゥングスロマンという、死語になりつつある言葉を思い出すだろう。

終盤の爽快感から、タイトルの出る瞬間には、思わずうなる。
上出来の映画ではないかもしれないが、大好きな一本だ。
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