ヨダセアSeaYoda

フローラとマックスのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

フローラとマックス(2023年製作の映画)
4.6
【STORY】
 主人公は息子と衝突してばかりのシングルマザー。
 セクシーが売りで恋愛脳な彼女は、息子にプレゼントしようとして断られたギターがきっかけで、自分の何かを変えようと思い立つが…?

【REVIEW】
 AppleTV限定配信はもったいない、『はじまりのうた』『シング・ストリート』のジョン・カーニー監督最新作。
 カーニー監督作品だけあって、お手本通りには生きられない”はぐれ者”たちが、音楽で心を救われていく展開が胸熱だし爽快。

 親になったら人生が1段階”終わる”から、けじめをつけなければならない。世間はそんな印象がある。
 果たして、未熟な青少年の頃の判断で親になった人は、それをずっと周りからとやかく言われながら、誰にも寄り添ってもらえずに生きなければならないのだろうか。

 もちろん子どもを持つことには一定の責任が生じて当然なんだけど、「お前が勝手に子どもを作ったんだろ」と一生責められ続けるほど、青少年の判断力は成熟してるのかって話。人を殴っても、物を盗んでも、「青少年は判断能力が未熟だから」子どもの頃の行いはそこまで後を引かない。なのに、子どもを産んだことだけは一生ついて回る「自己責任」。
 子どものためにはそうでなきゃいけないし、他に代替案があるかと言われたらそうではないけど、当事者がその扱いに悶々とするのは理解できる気がする。

 若くして親になって苦労している人々(特にシングルマザー/ファザー)は「ヤンチャ」「ヤンキー」「ビッチ」「軽薄」「自業自得」…他人事だと思って、見下してバカにする相手を見つけたかのように彼らをそう扱う周りの人々は、もう少し落ち着いて判断した方がいい。何か手を差し伸べなきゃダメだとは言わないけど、もう少し相手を理解しようと考えてみてほしい。

 まして、子どもを邪魔だと思ったことのある親なんていくらでもいるはずなのに、世はそう感じてはいけないという押し付けがある。どこにも何も吐き出せない世の中は、さすがにシングルには辛すぎるよね。今作はそんな現実について考えさせてくれる。もちろん、音楽を通して。

 今回は、いつものギター中心の歌だけでなく、ヒップホップやエレクトロの要素も入っているのがカーニー監督作品としては新鮮。特にラップはかっこいいな…。

 「親子」を中心に持ってきたのも何気に監督初のはず。どんな人間関係も平等に救う音楽の力をまた感じさせられて、さすがカーニー監督。最後のライブの編成もよかったな。音楽は全てを繋ぐ。

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観た回数:1回
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