みんと

夜空に星のあるようにのみんとのレビュー・感想・評価

夜空に星のあるように(1967年製作の映画)
3.8
ケン・ローチ監督長編デビュー作。

格差や貧困、人種差別といった社会問題を多くとりあげ、労働者階級や移民たちに寄り添う映画を撮り続けるケン・ローチ監督が1967年に発表した社会派ヒューマン・ドラマ。『ケス』の前年作品でもある。

詩的な素敵タイトルが意外にも感じたけれど、監督の社会問題に向き合う眼差しは既に今作から感じられた。

スウィンギングロンドンの時代、社会の底辺を生きるヒロインの悲劇的な運命を、ドキュメンタリーのように自然な生活感の漂う映像で語る…。
冒頭、ヒロイン、ジョイの生々しい出産シーンに度肝を抜かれる。演じるキャロル・ホワイトのアンニュイで不思議な魅力に最後まで惹き付けられる作品だった。
加えて、テレンス・スタンプの若くて甘いルックスも見どころだった。

テレンスが劇中で生の歌声を披露している弾き語り曲“カラー“をはじめ、ドノヴァンの劇中歌もとても良い。悲壮感より希望へと導く応援歌のように暖かく響いてくる。

1960年代、人生の選択肢がほとんどなかった労働者階級の女性たち。お金や欲望に貪欲でありながら、純粋に愛を信じ、求めるジョイが、男性への依存にならざるをえなかった時代でもある。
反面、男性が不在の時の生き生きと楽しむ様子からは、モラルから開放された時代でもあった事が窺えたり。

夢に描く幸せと厳しい現実の狭間で揺れ動きながらも、決して悲観すること無く、悲劇を悲劇としないジョイに女性の逞しさすら感じた。

そして、あらゆる欲望に忠実で、また、ふらふらとその場しのぎの欲に流されても、それでも幼い息子への無償の愛はある。
おバカちゃんでいて憎めないジョイの母性の煌めきに救われたラストだった。


因みに、今作でのテレンス・スタンプの映像が『イギリスから来た男』に使われていたらしい。
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