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エクソシスト 信じる者の06のレビュー・感想・評価

エクソシスト 信じる者(2023年製作の映画)
3.8
「我々は神を信じるのと同時に、隣人を信じている」

悪魔に取り憑かれた娘を救うために何でもする気の父親だが、悪魔は人々の信仰心の隙を突く。子役2人の身体を張った演技は必見の現代版エクソシスト。



主にカトリックがメインとなる悪魔祓いにおいて、プロテスタントや土着の宗教と共に手を取り合い悪魔祓いに挑むという挑戦は良い。分断に苦しむ現代に似つかわしい語り口だとおもう。

しかし、これは宗教に全く詳しくない僕の私見だが──結局はキリスト教の復権映画のようにしか見えなかった。


複数の宗教の融合もの、と言えばまず「来る」を思い出す。あの映画を僕は悪霊祓い版シン・ゴジラだと思っているのだが。仏教・神道・多分密教・イタコ・サイエンス、各界のエキスパートが集合して悪霊に挑む。

それか「女神の継承」もそうだろう。キリスト教の無力を感じ、土着の信仰に救済を求める。

今作は、そのなりふり構わなさが今ひとつ足りなかった。
登場人物は皆、キリスト教の教養があるのだ。差異があるのは信仰心の有無くらい。悪魔付きを囲んで聖書を読む傍ら、コーランが読まれたりはしないし、経を唱える事も無い。医学も活躍しない。
もしかしたら一神教の西洋では、この映画は画期的なのかもしれない。しかし多神教の東洋人からすると、全くバリエーションがないように見えた。



映画として語ると。
久しぶりに、幽霊の姿が見えない、王道なホラーを観た。悪魔祓いが始まるまでは、サスペンスの要素もあり、丁寧に作られている。特に最後の父親のサプライズには舌を巻いた。
また、子役2人の演技は必見と言うほど、迫力に満ちている。「自分がもし親になるならば、子供が悪魔に憑かれる可能性を考えておかないといけない」と、真剣に考えた程だ。

旧作からの引き継ぎ要素や、お家芸なんかもしっかり踏襲してくれる。特に過去のテーマソングがかかった時は興奮した。


残念だったのは、登場人物を増やしすぎた事で、それぞれのバックボーンの不足を感じた事。特に女の子の片割れの両親。彼らが何を信じ恐れて居たのかがイマイチ分からないから話に乗れない。
なのに主人公の(ボクシング・写真館)などの、本編に関わらないエピソードは積まれる。パズルが上手くいっていない気がする。


総じて、悩んでるなら観ても良いと思う。少なくとも3Dのマネキンみたいな悪魔は出てこないから。
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