MINAMI

悪は存在しないのMINAMIのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.7
濱口竜介監督

あっぱれが過ぎる。
ロンドンBFIにて先行上映。

会話の可能性をどこまでも信じているから、言葉には心が通い会話になる。お互いの心が会話を信じれば、それが会話を超えた対話になる。
僕たちは素晴らしき、あるいはただの人間だから、お互いに分かり合えるであろうことはお互いに分かっている。それでもたまに分かり合えない時に僕らは一体どうしたらいい。
根本的に言葉の通じない者同士(人間対非人間)であれば、分かり合うための手段はどこにあり、どのような形で対話を形成できるだろう。

会話の可能性が会話の不可能性に転ずる、たった一瞬のことに思えるその瞬間には、恐ろしいほどの時間や、恐ろしいほどに失われた心が存在していたことに気づく。
そしてそれはいついかなる時にも否応なく、気づいた時にはもう遅い。

説明の不十分具合がとてもナイス、気持ち悪さの具合がとてもナイス。言葉や会話、対話の力をどこまでも信じていたい。互いが分かり合えるための手段、分かり合うためへの対峙を常に。
悪は存在しない!
MINAMI

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