こうみ大夫

悪は存在しないのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2
徹底的なフィクションの中でドキュメンタリーをやる、そして時折の笑い。“ドラマ”を作るのが上手いなぁと思った説明会のシーン。俳優に関しては技巧より素材を活かす時代になったなと感じラーメンと似た世界になってきている。
人間の長い歴史の中で暴力が否定された時代はこの数百年に過ぎない。そう大学の時講義で教わったが、ある種の「中世」をこの作品に感じる。話し合いや歩み寄りによって和平が生まれることが大事とされるこの時代に、私たちは避けられない「バランスの崩れ」を日々目撃し、いつも無視する。
敬語も使えない明らかに「ヤバい」奴を私たちは「社会不適合者」として無視する。鹿、という動物から「馬鹿」という言葉が出たように、それらを叩くのではなく、穏便に無視するのが人間なのだろう。手負いの鹿のように、私たちが文明的だと思っているこの社会も、いつ誰かが自分を襲うかなど全く分からないのだ。
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