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悪は存在しないのogiharaのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
人間が自然へ干渉し、都会が地方へ干渉し、そして自然が人間へと干渉する円環が描かれている。
他者への干渉(いわゆる「贈与[gift]」)は生きるために不可欠なある種の原罪であるが、劇中でタクミはバランスが重要だと言った。しかしバランスは動的に保たれる。その手段は必ずしも(人間同士ですら)平和的なものではあり得ない。
自然のバランスに倫理はない。倫理は人間の理性が構築した枠組みでしかなく、善悪とは人間の倫理が構築するものなのだ。
それでもなお私たちの倫理が尊いのだと信じるとして、世界のバランスの崩壊/維持に伴う不条理な暴力を、私たちはいかに受けとめるかが問われていると感じた。
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