Hanareru

悪は存在しないのHanareruのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ものすごく面白い映画でした。
最初は自然の営みを間借りしている人間たちが、無言のままで作業をする様子が描かれていて、彼らが薪を割って、水を汲む。物を運ぶ、その先に食材を見つける。彼らがむらに十分に根を張り生きていることがとても伝わってきます。そういう映像を眺めていたら、徐々に全貌が見えていく。例えば薪を割っていた人のうっかりさや、町の人達の不満であったり、徐々に開発施設の話になっていく。会議の話では、理詰めで聞いていく住人と、仕事で説明会を開く芸能事務所の人。その用意不足からくる戸惑いなどは、自分にも思い当たる事があり辛かった。その対立を描かれていくと思えば、突如としてはしごは外される。
説明会の男性も、中立を示した便利屋も必ず謝らない。タバコを吸う行為でガス抜きする。そのプライドの高さから互いの見下しが感じられる。その尖り方があるから、どうせ話し合ってもうまくいかなそうな気がする。結局、上の立場は現場なんて来ないんだし。誰が手を染めるかという話だろう。既に、森の中に整理された水路があった。そのコンクリートを配備する下で、たくさんの生物が死んでいる。要は、自分を嫌な気にさせるかという話をずっとしている。自然を守ることが善というよくある対立から、かなり距離が取られ、その生物的な行いも自覚的な住人たちだった。それを最後まで芸能事務所はわかっていなかったのじゃないだろうか。見切り発車で生きる芸能事務所の男性も良かった。自分の想像の世界と現実のすり合わせが全くできていない。
あの終わり方であることがとても良かった。解決でもなく、バランスなど話していて、ではバランスの具体性は何なのか。それは発音した彼でさえ伝えない。主役の男性は、口を動かして考えを喋る。ただ、何を考えているのか全くわからない。自分の考えを喋ることがあるけれど、どうか確信のように思えない。その不信さが、よりラストを混乱させた。どう取ることもできるだろうし、その意図はパンフレットに記載されているかもしれない。彼のした行動は想像できるが、それは陳腐な気がするし、また振り返ったときにラストのことを考えたいと思う。
この独特な作品は俺は好きだった。個人的に、いままでの会話劇を続けながら視聴している自分と映像の垣根を壊していく過程がとても大好きな監督だったが、今回はセリフは最小限に感じた。美しい映像の数々でした。
また見に行きます。
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