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悪は存在しないのwongのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5
素晴らしい一本。天を仰ぐ煽りショットの進む方向の不一致や遡り。だるまさんが転んだの時間停止。吐く白い息、タバコの煙、糞から発する蒸気の煙、やかんの煙、暖炉から排出される煙、平原に広がる霧。煙を使った演出が主題を映像的に画面に刻み込む。

フロントガラスからの景色。リアウィンドウからの景色。普段見えているリアウィンドウからの景色を部外者が隠すこと。

この親子が帽子を取ることは外部から別の何かを受け入れることの契機として作用している。父は村の開拓者を。ハナは手負いの親鹿を。ハナは拒まれた。同時に父も側にいた彼を拒んだ。

美しいショットと感情を排除したリアリティある台詞と会話。バランスが最高だ。

どことなくハッピーアワー以前の作品にリズムは似てるが、前作な寝ても覚めてもやドライブマイカー、偶然と想像があることを考えると、その作品の幅に驚きを隠せない。
こんなこともできるのかと。

その才能を改めて見せつけられる1本
タイトルの入れ方なんかはまるでゴダールへのメッセージのようだった。
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