千年女優

悪は存在しないの千年女優のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
自然豊かな山あいの町「水挽町」で暮らす林業従事者で、男やもめで仕事に没頭するあまりしばしば学校に通う娘の迎えを忘れる巧。コロナ禍のある日、助成金目当てでグランピングの計画を持ち込んだ芸能事務所のずさんな設計に物申した彼が、なんとか説得を試みる担当男女の説得を受けて思わぬ事態に発展する様を描いたドラマ映画です。

『偶然と想像』でベルリン国際映画祭、『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ国際映画祭並びにオスカーと師事していた黒澤清と同様海外で高評価を得る濱口竜介が作曲家の石橋英子の依頼に端を発して構想を練り上げた作品で、ヴェネツィア国際映画祭では銀獅子賞を獲得して黒澤明以来二人目のオスカーと三大国際映画祭受賞者となりました。

悪なき犯行や自然破壊、コロナと扱う題材自体は決して珍しくないですが、この展開ならそうしてたくなるオタメゴカシには逃げずに人間と社会にある混沌へと誘います。「会話劇」の使い手ながらその効用はあくまで深みとユーモアで、物語を動かしテーマを浮き彫りにするのは常に「アクション」という流石の手腕を発揮している一作です。
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