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悪は存在しないのsonozyのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
5.0
濱口竜介監督が『ドライブ・マイ・カー』の音楽を手がけた石橋英子さんからの依頼を受けて制作した、即興演奏ライブ用の映像『GIFT』の元となる物語という、ちょっと異質な作品。
なので、石橋英子さんの音楽と、物語/映像がとても印象的に融合しています。

自然豊かな高原にある長野県水挽(みずびき)町という架空の地で、娘の花と暮らす巧。
黙々と丸太からチェーンソーと斧で薪を作り、知り合いのうどん屋(和夫・佐知夫妻)のために川の清水を汲み、いつも花のお迎えに遅れてしまうので、花は学校から一人で森の中を歩いて帰る。巧は森で花を探す...そんな日々。

彼らが自然と一体となったように暮らしている(まさに"悪は存在しない"ように見える)地に、東京の芸能事務所が政府からの補助金を得てグランピング施設の設営計画を進めていた。
そのプロジェクトの説明会が公民館で行われ、芸能事務所の社員である高橋と薫と、町民たちの会合が行われるが、町民たちに受け入れがたい大きな問題が明らかになる・・・

オープニング、そしてラストの森の中で空を見上げるような移動映像。
巧(大美賀均)と花(西川玲)の絶妙なキャスティング。
会合での町長や佐知、そして巧の発言。
その発言を受けた高橋と薫の変化。車の中での二人の会話も面白い。
そして、やっぱり悪は存在するよなぁと思わせる?(笑;)グランピング施設のコンサルタント。

巧が森で拾う鳥の羽根(町長の息子が羽軸をチェンバロに使う)。
花と鹿の関係。森の鹿の死骸。
そして、余韻の残るあのラストシーン。
巧と花、そしてタイトルの意味を空想する時間。
素晴らしい。
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