「面白かったー」と軽く言いたい。それくらい軽やかな面白さがあった。
静謐で美しい詩的映像と、いつもの濱口監督作らしい軽妙で、時に緊張感を保った会話劇。音楽・石橋英子さんとのコラボレーションが前提にあるからか、どこか二つの映画世界が合流したかのようなテイストを覚える。あらすじから「都市 vs 田舎」の対立構造を予想するが、特に会話劇に引き込まれる中盤以降から次第に別の対立構造が明らかになり、この転換もスリリング。*
「衝撃」はあるものの、実は丁寧にセリフで誘導されている。序盤の陸ワサビ、林の中の鹿の死骸視点(?)のようなローアングルで人物を真正面に配置したショットは、まるで自然に見返されている、自然に睨まれているようで不気味。この自然に睨まれるショットは、ラストに繰り返され爆発する。
*本作と対になるサイレント映画『GIFT』はむしろ「都市 vs 田舎」の構造しか見出せなかった。本作と同じ映像素材を使用しているものの、時系列をシャッフルし、より東京の芸能事務所のスタッフ二人の「異物感」を際立てる編集が目立つ。