ゆう

悪は存在しないのゆうのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
GWはざまの平日19時に鑑賞。満員。
東京では、今のところ下北沢(K2)と渋谷(ル・シネマ)のみの上映となっており、関心の高さに比し、上映館の数が釣り合っていない印象(ただシネコンには向いてなさそう)

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「正義」ほど胡散臭い言葉はないが、「悪」という言葉にも同様の雰囲気が感じられる。

この映画にはいくつもの相対する関係が見られる。

デベロッパー/住民、都会/地方、雇う者/雇われる者、人間/動物

住民は開発側を目の敵にする。まるで自分たちが正義であるかのように。

ただ彼らの主張は、既得権益を守りたい、ということの言い換えにも聞こえてくる。
動物にとって人間こそ害悪であるように、彼らの主張が真理であるはずがない。
デベロッパーにはデベロッパーなりの思いがある。立場によって物事の見方は変わる。
正義が存在しないのと同様に、悪もまた存在しないのである。

物語は衝撃的なラストを迎える。
手負いの鹿は反撃を加えることもある。
それもまた悪ではない、ということか。

白を基調としたオープニングに対し、ラストシーンは黒く沈み、暗い。
これもまた相対する構造を示している。
ゆう

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