ブラウンソースハンバーグ師匠

悪は存在しないのブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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タイトル見たとき「じゃあ何で俺はここにいんだよ!?」と憤慨したけど、鑑賞後はしっかり安心しました。善も悪もないことを心得よ。

「衣食住」を成立させるには人間は自然から奪わなきゃいけない。人間は「いただきます」と感謝をすることが最善だと落ち着いている。だが、自然側からして、それでイーブンとなるのだろうか。そのバランスをクリアして、初めて人間の衣食住は悪ではなくなるのではないか。ラストを人身御供のように解釈してしまった為、余計にスリラー映画のように捉えてしまった。

無感情的な演技は今回、主人公だけが唯一担っている印象。主人公の演技では放屁が一番熱が入っていた。
説明会シーンは怒りを露にする声よりも、平坦な声の方が恐ろしくズシンとめり込む。
また、巧は達観しているように見えて、他の登場人物と同様揺らぎがある。必要以上に言葉を発さない寡黙な性格にも見えるし、単純に言葉足らずにも見える(高橋からタバコを貰うときに「タバコって吸う?」の後に続く言葉がなかったり、車内でタバコを吸うときに断りを入れる高橋と無断で吸う巧の対比)
花の迎えを忘れる。忘れるということが日常化してしまっている。うろ覚えなのだが、巧は花と正面から会話するシーンってあったっけ?巧はいつも花に背を向ける。おまけに屁をこく。その延長のように、花は牛糞の山を走り抜ける。散々だな。一方、巧は高橋が「気持ちいい~!」と言うようなことばかりやっている。バランスとは……

都会二人組の車中の会話は、ちょっと前に観たビフォア三部作と相まって、「台詞」から逸脱したような愛おしさを感じる。一方で会話の着地点そのものはグランピング開発を進展させる為の動機付けと結びついており、二段構えで感動した。

この監督はバイアスが掛かりすぎており、もうそこらの犬の糞を撮ったとしても観客が考察してしまう状態である為、逆に「世界が評価しても私が評価するとは限らないんだから!」と強い気持ちで鑑賞するのをオススメします。自分はそのスタンスで鑑賞し、無事快楽堕ちです👍️