せっ

悪は存在しないのせっのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


山の中の綺麗な水の流れる田舎町に暮らす花と父親の巧、そこにコロナ助成金を目当てにグランピング建設計画のために芸能会社の人々がやって来る話。

劇中では、"上の者"vs"下の者"の構図がたくさん示される。その上と下は物理的な上と下かもしれないし、社会構造の中での上と下、都会から見た田舎、田舎から見た都会、親と子供、色々と移り変わる。でも、そこには全て自然を地盤とした人間の営みの中での話。自然が人間を上から見下ろす、または同じ目線でいることを忘れてしまう。ラストで、そのことが突きつけられて、私達の構造がひっくり返ったのかなあと思った。

私達はあまりにも自然を信じすぎている。
自然破壊も、自然を大切にという考えも、そもそも自然とのバランスを取った共存などという考えも、すべて人間を上とした身勝手な考えなんだよなぁと思う。人間は毎日自然から水でも食料でも、常に何かを切り取り続けている。一方で自然も頻繁に理論などなく無慈悲に人間の命を奪う。良く考えれば、これが究極のバランスなのではないか?自然からの恵みを貰っている代わりに、自然も私達の命を引き換えに貰っているのでは?という恐ろしさがあった。

人間も自然もお互いに「GIFT」を貰い、その営みに「悪は存在しない」みたいな(笑)

あと単純に、最初"理想的な田舎生活"を見せられて、完全にそちら側にほだされたが、結局、"都会の嫌な人"2人の車内での会話に一番共感して面白みを感じた私は結局ストレスフルな都会の生活が好きだしそこから抜け出すことなんてできないんだなと思った。

そして、これは言っちゃダメなのかも(他の人の感想にあんま書いてなかった)だけど、ラストは半分ぐらい人災では?と思った。いくら田舎とはいえ子供を!山の中!1人で!放置!?保育園の人も一人で帰ったよ〜!?!?(笑)多分言っちゃいけないことなのかもしれないけど、思わずにはいられない。
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