無影

悪は存在しないの無影のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画への造詣が浅いので安易にフランス映画っぽいって言ってしまいそうになりますが、それぐらい「自然」へのこだわりが見える作品でした。
作中で区長が水は上流から下流へ必ず流れていくから、上流に住む者には責任があると口にしていましたが、これが本作の巧や高橋たちの関係性を言い表しているなと思いました。村に持ち込まれたグランピング場建設の話は都心から田舎への負担の押し付けですし(村人の中にもグランピング場は都会の人が日頃のストレスを吐き出しにやってくるみたいなことを言ってた)、そもそもその仕事は社長やコンサルが高橋たちに押し付けていますし、もっと言うと社長がすがっていたコロナ補助金はコロナ禍からの復興を国が民間に金を流すことで押し付けたものですし…区長の言うように、上流に立つ誰かが責任をとっていれば、社長はコロナ補助金に固執せず、高橋たちは自分たちの仕事に嫌気が差さず、巧たちはグランピング場建設計画に怒ることもなかったのかなって…自分たちに負担を押し付けようとしている悪も、実は誰かに負担を押し付けられていたという構造が浮かび上がると、「悪は存在しない」と言えるような気がします。それを象徴するように、説明会で村に負担を押し付けようとする悪として登場した高橋たちは、その後社長やコンサルに負担を押し付けられていた被害者として描かれていましたから。だからこそ、巧と高橋たちが対話を通じて互いを悪ではないと認識した展開は良かったですね。
と言いつつ、あのラストよ…おそらく花ちゃんの目の前にいる手負いの鹿を刺激しないように大声を出した高橋を殺したのかなとか思ったのですが、にしても殺すか?そんな突拍子もない行動も娘のためだから「悪は存在しない」って…?
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