ゆめたろう

悪は存在しないのゆめたろうのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2
風光明媚な土地にいけすかないグランピング施設の建設を計画するいけすかない芸能事務所。その背後のさらにいけすかなさに輪をかけた芸能事務所社長とコンサルティング会社。
安易な二項対立に落とし込み反発しあうのではなく自然目線だと共によそ者同士。ゆえに互いに共感と対話を図り合流しようと試み「都会×田舎」の対立構図はいつしか「人×自然」へとシームレスへと展開する。軽やかな演出、語り口ながらも確かな腕力を感じさせる。

「水は上から下へ流れる」縦の移動。この自然の摂理を住民も充分に肌身で理解しているつもりで地域に根ざしているのだが、水汲みや薪割りなどで反復される横の移動はこれに反した行為である。ラストの展開ではこの横の移動を繰り返したために自然界との衝突が起こったようにも見えるし、そもそも無理のある計画に自然のコンセンサスを無視して合流しようと歩み寄ったための罰にも思える。

映像的快楽、おもしろさに溢れていて、なおかつ106分という丁度よさ。お尻にもやさしい。