ちゃ鍋

悪は存在しないのちゃ鍋のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

大人の描写が水平、静止であったのに対して、花ちゃんのカメラが垂直運動に終止していたのはやはり死のメタファなのだろうか。緊張と緩和とか色合いの対比が印象的。
ドライブ・マイ・カーを経ているからか、車という閉鎖的な空間での会話の質がめちゃくちゃ良い。緩やかな移り変わりというか、会話の中でキャラクターたちが変容していく感じが。
また、ラストシーンの解釈も分かれるので人と見に行って良かったと思う。わかることと面白いかどうかは別物だなと感じたし、解釈の相対主義はものすごく作品論的な語りになりうるなとも思った。
ラストシーンは断絶なのか。有機的な統一を持たず、部分的に接続、切断される物語はドゥルーズのいう「機械としての芸術」っぽいと感じる。
オッペンハイマーといい、本作といい、大音量と無音の緩急で緊張感を高めていく表現は最近の流行りなのだろうか。
余談として。反復される垂直、水平の移動や、固定されたカメラが印象的で、ゴダールの決別や「切腹」を想起した。しかし、明確に緩急をつけて冗長過ぎないようにしているのが濱口竜介らしくてよかった。木漏れ日は「PERFECT DAYS」を想起し、演出や音楽の違いでここまで緊張感に差が出るのかと面白く感じた。
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