不穏な美しさが奏でられながら、魅惑される自然の中に分け入っていく。そうして森が神話的な空間として創出されていく。
ヨソモノであるはずの観客も、神隠しにあったような子供をともに探している。
森における神は「鹿」であり、神=鹿には触れてはいけない。傷ついた神に近づいてはいけない。神に触れた罰として娘は隠される。
犠牲、生贄、供物として捧げられた男性によって娘は帰還する。
ラストの激しい息遣いに、森の怒り、その呼吸が共振する。
神は悪ではない。
神のために殺す行為は、聖書以来悪ではない。
神による秩序が保たれる空間において、「悪は存在しない」。