いつもいっちゃん

悪は存在しないのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
5.0
ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した濱口竜介監督最新作。
今年の期待していた1作。
ロケにもなった長野県に位置する映画館で鑑賞。

長野県の田舎町で起こるグランピング場の開発。
町の住人たちと開発チームの間での意見の衝突と摩擦。
そこで生きる住民たちと歩み寄ろうとする中、浮き彫りになる人間と自然の矛盾ある共存の在り方。
また鋭い。
今まで人間関係、男女、恋愛についてのテーマを扱ってきた濱口監督が方向性を変えて描く、人間と自然のバランス。
果たして調和が保てていくことができるか。
グランピング場の開発をする上でのリスクと人間感情。
道徳心と本音が交錯する中、静かに訪れるその瞬間。
研ぎ澄まされた美しい雄大な映像美に、惹き込まれる脚本。
説明会の場面、車内の会話が面白い。
今までより動の印象があり、より外野からの視点が主になる。
しかし、そうすることで見えないものの恐ろしさも映してしまったのも驚き。
不協和音が響き続けるよう。
もはや濱口竜介監督、巨匠の領域にして新境地も見せてくれた。
まだまだ映画は面白い。
上映時間が106分というのと、エンドロールがかなり短いのも好感。
アカデミー賞を受賞して、かつこのスタンスは好感しかない!