クロ

悪は存在しないのクロのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

自分の中で、この映画のラストの解釈は決まっている。手負いの鹿は人を襲う、大切なのはバランス…

彼は高橋を殺すことでバランスを取ろうとしたのだ。娘が手負いの鹿に襲われたと咄嗟に思った巧は、鹿の命と等価交換で殺される命として高橋を「自然」に差し出そうとしたのだ。高橋が巧に着いてきたのは高橋の意思だし最初から計画的に狙ったものではないと思う。
人を襲わない鹿を人間が狩り続けた結果、鹿が人間を襲いバランスが崩れる様を最後の最後に描いたのだと思う。
「田舎と都会」の対立構造に、最後の最後に「自然と人間」の対立構造をぶちこんできたのだ。それはあのコンサルがいうような出来ることと出来ないことの整理とか、折衷案を探るといった方向性からあえて大きくかけはなれている。
あるいは区長が言う「上の争いが下に降りてくる」結果なのかもしれない。都会のいざこざが田舎にふりかかり調和が乱れるのを彼が正したのかなとも思う。
いずれ彼はとっさにバランスを取ろうとしたのだと自分は捉えた。

ただそれが好きかと言うと…正直、なんだそれって思ったな。監督は田舎とか都会とかコロナ禍の問題と向き合う気あるのかー?みんな生きるのに大変そうな人達を描いているのに、それらを無に帰すような明後日の方向に物語を終着させてどや顔されてもな…
自然に関心があるのなら真正面からそれを描けばいいのに…本当に自然に関心がある人の描写だと思えなかった。

過剰に田舎を暗くしたり明るくしたり、都会を悪者にしたりせず嫌いな映画ではなかったんだけどな。個人的にあのラストはマイナス。自分の解釈が完全に正しいとは思わないけど、少なくともあーいうラストにすることが彼らの問題や自然の問題と向き合っているようにら思えなかった。まあ行政の存在がよく見えない、行方不明者の捜索に警察も消防団の姿も見えない時点で田舎をしっかり描けてるとは言えないんだけど…

全く関係ないけど、田舎を描写する上で一瞬でも消防団を描写した『君の名は。』は偉かったよななんて思った笑
クロ

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