石橋英子さんの「ライブパフォーマンス用の映像を作ってほしい」というオファーから始まった本プロジェクト。同じ撮影素材の中からライブ用サイレント映像『GIFT』と、映画『悪は存在しない』が誕生したという。
…という前提を知らぬまま公開初日の一発目を観に行ったので、わ、こういう感じか!と冒頭は結構驚いた。とらえどころのない不気味な美しさが充満していて、劇場で没入できる贅沢さといったら。車内のシーンは観たいものを観せてくれて本当にありがとうございますとただただひれ伏すばかり。
舞台挨拶は、巧役の大美賀さんも高橋役の小坂さんももとは制作側(車両部)のスタッフだったという話から始まった。濱口監督の「いい人と仕事するっていうのが一番にある。だから現場は穏やかで雰囲気が良い」という言葉が監督や作品を象徴している気がして印象に残っている。
手負いの鹿こそ最も高く飛び上がると
猟師が話すのを聞いたことがある
それは断末魔の痙攣なのだ
それを草むらが静かに受け止めるのだ
砕かれた岩は迸り散る
踏みつけられた鋼は跳ね返る
頬がますます赤くなるのは
熱病に冒された時
陽気を装ってるのは苦しんでるせい
そうやって身構えているのだ
誰かに血を見つけられて
傷ついているよと言われないように