石橋英子の重厚感のある音楽とともに
山の木々がゆっくり映し出され
どんどん森の深奥に潜っていくような、
森に埋まっていくような感覚に陥いる。
それを見て単に美しいと感じると共に
どこか隠しきれない不穏や、危うさを感じる。
その2つの感覚がずっとそこに併存してるような映画だった。
そんな端的で直感的には語れないこの世界を、
映画という媒体に落とし込む膨大な作業の
片鱗のようなものを見た。
カメラが映し出すフレームの外で
常に世界は動き続けている。
そこに悪意はない。
明確に私たちが存在を確認できるのは
昼間の空気の澄んだ森と日の沈んだ闇の中での森、
そして鹿の死体くらいなのだろう。