対話と調和
『ドライブ・マイ・カー』で世界的な評価を確立した濱口竜介の監督の最新作は、前作とは異なる方向性を模索した挑戦的な作品である。
自然豊かな村にグランピング施設の建設計画が持ち上がる、という以外にストーリーといえるものは存在しない。
映画は長回しや森を見上げながら移動するカットなど不思議なカメラワークを使いながら、風景とキャラクターを追いかけていく。
濱口竜介監督の特徴はキャラクターに心情を吐露させるのではなく、他者との会話のなかに関係性の変化を画面で見せる点だと思っている。
その意味で『ドライブ・マイ・カー』でも有機的に機能していた車内での会話シーンが本作においても「対話」として重要な意味を帯びている。
「大事なのはバランス」と言っていた主人公のラストの行動には度肝を抜かれる。わたし自身もその意味をうまく咀嚼しきれていないが、ネタバレを踏む前に見ることをお勧めしたい。