いはん

悪は存在しないのいはんのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.3
悪は確かに存在しなかった。
私たちの世界にも、自然にも。
多面性故の悪の消失と、善と悪の両面性が存在しない故の悪の消失。

私たちの世界の悪の話は、理性を使えば理解ができる。誰が何を求めているのか、それが分かれば全て釈然とし、悪が消滅する。村民も、タレント会社の社員も、コンサルも、誰も悪にはなり得ない。彼はただ異なる方向を向いて、異なる世界で生きているだけ。そのままであれば何も問題はなかった。境界を超えて、異なる世界へ入る時、ベクトルの持つ方向性が浮き彫りになる。同じ言葉や感情は異なる世界で、異なる意味を持ち、悪となりうるが、その本質に悪は存在しない。

でも自然は、全く次元が違う。
私たちが、予想も理解もしない世界がそこには広がっている。善も悪ありはしない。あるのは不確実性と、不確実性を全て受け入れる事だけ。そんな気がする。

全てのシーンが、考え抜かれているように感じた。たとえ自分が全てを理解していなくとも。凄く変態的なこだわりの様なものを感じ、映画ファンとしては堪らない気持ちになった。
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