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悪は存在しないのgrpcdのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

Bunkamuraで観るのはちょっと違うかな、と思いワンスクリーンのミニシアターで。補助席まで満席。観客の集中力も半端ない。
芸能事務所が補助金目当てで計画したグランピング施設を巡るデベロッパーと村人たちのナガノ金融道…と思ったら「神話」でした。
まず録音が抜群に良い。冒頭、山本達久の手でハイハットが連打されるやいなやグッと引き込まれる。真っ白な雪原の上に刻印される足音、ストーブのなかで爆ぜる薪木、滔々と流れる沢の水音。キャストや画面以上に音が雄弁に語る。
美しくも残酷な森の掟。木々を下から見上げながら移動するショットは少し前に観た『正義の行方』を連想させる(あちらはドローンによる空撮の俯瞰ショット)。"水は低い方に流れる"という絶対的なルールを前に人間はどう振る舞うのか。タイトルを見た誰しもの脳裏に浮かぶ「悪は存在するのか」という問いの答えを揺さぶる装置としての映画。良くも悪くも箱庭的で、『親密さ』『ハッピーアワー』といった他の濱口作品と比較するとあまり好きではないかな。とはいえやはり会話劇には傑出した面白さがある。特に車中の先輩後輩のふたりのやりとりは劇場でもクスクスウケてました。
そろそろ『不気味なものの肌に触れる』の続編お願いします。

(余談)うどん屋の主人は『ハッピーアワー』のサブカル夫婦の夫、特徴的な喋り方の後輩は同じく『ハッピーアワー』で生真面目ナースの姐御に怒られてる新人役のひとでした。なんかこの顔見たことあるな〜と思ってたのでスッキリ。
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