サトシ

悪は存在しないのサトシのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.4
濱口竜介脚本・監督、大美賀均主演の邦画。
第80回ヴェネツィア国際映画祭(2023年) 銀獅子賞など数々の賞を受賞。

舞台は長野県、水挽町。
自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧とその娘・花の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は反発し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく・・・。

【キャスト】
巧:大美賀均
花:西川玲
高橋:小坂竜士
薫:渋谷采郁

シネマサロンの課題作、そして4月の邦画部門Feibarittoにあげられていたので気になって鑑賞。
冒頭からまるで時間が止まっているかのような自然美が木々だけの映像で表現されています。娘の花が青色の服、雪山にいる所から「ゴールデンカムイ」も重なり大自然の中にワープした感覚になります。
そして巧の薪割り、湧き水取りが毎日のルーチンである事が丁寧な作業からも伺えます。自然に溶け込む人々の生活に引き込まれて、それが自分の生活であるように感じる事ができるのが不思議です。
知っている俳優が誰も知らず、演技力があるとは言い難い所も非常に臨場感を感じてしまいます。
グランピング場の説明会での町民と会社側のやり取りは本当に面白かったです。
個人的には会社側の立場で見ていましたが、汚染水を出したり、鹿の通り道を塞いだり、24時間体制の予算が無いなど、自然保護を無視した杜撰な計画では、プレゼンできそうにないです。
3人で昼食を食べに行き高橋が温まりましたと本心を言った後、上手いって事ではないと突っ込まれた時は館内からも笑い声がありツボでした。
雪山で鹿狩りのライフルの銃声が2回聞こえる時には嫌な予感がしました。
ラストも娘を守る咄嗟な判断だったので悪は存在しないですよねと訴えられ納得できるか試されているような気がして重い宿題を出された感覚になりました。
いつまでも余韻が残る素晴らしい作品に出会う事ができました。
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