くさむすび

悪は存在しないのくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

濱口映画の代名詞である、緊張感のある一触即発の会話がニュースでよく見かける住民説明会の設定で展開されていくとは! そして濱口映画で幾度となく描かれている"他者を理解すること"というテーマが今作は比較的分かりやすく展開されていた。根本的に対立している芸能事務所と原沢の住民が親交を深めて、相互理解を図る。その中で巧の生活や目線だけでなく、芸能事務所の2人の何気ない車中での会話をじっくり見せていくことによって、今作の中では"悪"とされるであろうグランピング施設開発側への理解を観客に促す。そんな「だから『悪は存在しない』というタイトルなのか〜」なんて分かった気になった自分をぶん殴るようなラストは痺れた。映像の素晴らしさ、引き込まれる会話劇、全てをひっくり返すラストと、映画としてしっかり面白いのが凄い。
音楽ぶつ切りの演出は『親密さ』っぽいし、違和感のある特徴的なカメラワークなど濱口竜介らしさがとてもある作品。けれども悲しいことに、自分は『ドライブ・マイ・カー』や『寝ても覚めても』のようなエンタメ性のある濱口映画が好きなんだなということに気付かされた作品にもなってしまった。一番好きな濱口映画が『寝ても覚めても』、2番目が『ドライブ・マイ・カー』、3番目が『PASSION』or今作と言った感じなんだけど、2番目と3番目には大きな壁がある。
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