Monisan

悪は存在しないのMonisanのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

観た。

そんなのあり得ないんだけど、出てくる人達が自発的にそこにいて、その行動をしているかのように見える。
どうやったらこんな芝居がつけられて、こんな台詞が書けるんだろう。凄まじい演出力。

冒頭の林を見上げる移動のショットがまず美しい。そこから丁寧に暮らしを描いていく。
住民説明会のリアリティ。いかにも芸能プロダクションにいそうな2人。住民達のクレームも抑えつつリアル。コンサルのいい加減さも、社長の立場からくる振る舞いも。
再度向かう羽目になった車内での2人の会話。好き過ぎる。なんでこんなに自然で実際にありそうな会話出来るの?マッチング通知からの、俺が辞めて管理人になればいいんだ、は笑った。観客も声出して笑ってた。薪割りも、うどんの感想も、水汲みの一連もしばらく彼のターン。その高橋役は小坂竜士。俳優を一度辞めて車両部だったとの事。そして、車内のシーンは牽引じゃなくて自走だったから、ハマり役なのか。

主演の大美賀均の存在感も際立っていた。スポーツで例えると、試合に出れない監督に変わってフィールドを取り仕切るゲームキャプテンというか。
彼が中心に映画がまわっている感じ。

音楽が途切れて、花がいなくなる。さっきまで笑って観ていたのに、急に胸がドキドキする。劇場の他のお客さん達も緊張しているのが伝わってきた。

防災放送のシーン、めちゃくちゃ良い…
辛いシーンなんだけど、上がってくる煙が美しくて。テラスで立ち尽くす黛は何を考えているんだろうか、と。

鹿が人を襲う事は、まず無い。但し怪我を負った鹿や、その親は別だ。
朝靄のような中で親子の鹿が現れた時は鳥肌がたった。久々に日本映画で予期せぬ表現を見させてもらったというか。意表を突かれたシーンというか。
野暮な推測はしないでおこうと思ったが、巧は、高橋に見せたく無かったって事なのかな。

暗い森の中、息を切らせているのは…
ここで終わって欲しい、と思った所で終わってくれた。「悪は存在しない」短いエンドロール。格好良かった。

美しい映像は北川喜雄カメラマン。
音楽は、石橋英子。そもそもライブパフォーマンス用の映像依頼で制作が始まったとの事。
パンフレット買ったので、その辺りもちゃんと読もう。

この監督の作品は毎度唸らされるな。

濱口竜介、脚本・監督
Monisan

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