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悪は存在しないのtakunのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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すごすぎる。
目に映る、耳から聞こえてくる全てのことに、色んなレイヤーがかかっているような気がしてしまう。作中大きなショックがあるのはラスト10分程度なのに、ここまで没入できるのは、独特の抑揚で続く会話劇によって、暗いとも明るいともいえない崇高な音色の石橋英子の音楽によって、違和感のあるカメラワークによって、終始予測不可能性を感じたからだと思う。
大きなテーマのひとつとして、自然との共存があったと思うが、特に自然から観られているようなショットが多くあったのが印象的だった。

ラストシーン、村の「便利屋」である巧の行動は、清廉な水を汚染する存在、すなわち自然に対する異物である高橋に対して、誰一人悪意をもっていない村の人たちの意思の集積の出力であったように思う。グランピング施設ができることによって、鹿の居場所が無くなることについて、高橋の放った一言は、巧にそれをさせるには充分であったように思うが、高橋もまた、軽率であるが「悪」ではないという点でやるせなさがあった。
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