ベンジャミンサムナー

悪は存在しないのベンジャミンサムナーのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 あの急に梯子を外されたようなラストは、今までも濱口監督が繰り返し描いてきた「親密な間柄でも分からない部分はあるよね」というテーマを自然に当てはめたからだと思う。

 「自分たちが不勉強でした。この町の事を一から教えて下さい!」と請う東京から来た二人に巧が自然のことを教える構図だけど、「鹿が人を襲うことはない」という台詞が前フリになってるように、巧でも把握できない領域が自然にはあることを示したラストなんじゃないかな。

 情感あふれる石橋英子の音楽に合わせて「美しい自然だなぁ」と浸っていると突然音楽がぶつ切りになる演出にもそのことが込められているんだろう。
 
 濱口監督おなじみの惹き込まれる会話劇に言外で語る演出を織り交ぜながら106分といつ尺に収めてるから、濱口映画の中でもかなり観やすい作品になっている。