たくちゃ

悪は存在しないのたくちゃのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞予定がある方は絶対にネタバレなしで観てほしい。ラストの展開は頭がついていかず、鑑賞から時間が経ってもこの映画のことばかり考えています。

『怪物』のように一面的なところしか見えていなかった物事が明らかになっていくお話でしたが、あちらのあからさまな描写とは異なり、『悪は存在しない』は自然と視点が切り替わっていく点が素晴らしかったです。

最初は町内の人たちに肩入れして鑑賞していたのに、東京から来た2人の背景が見えてきたことで何となく違和感が出始める。『悪は存在しない』というタイトルにも考えさせられる作品でした。


——
巧という人物の過去が見えず、主人公なのにどこか不穏な感じがずっとしていました。
娘のいる父親で、町の人たちから頼られる存在で、慎ましく生きているように見える。
ただ、家に飾られた写真や物忘れが多いこと、どんな人物なのか見えてこない。

グランピングの建設で鹿の通り道がなくなってしまうことには意見するのに、鹿の狩猟は許容する矛盾。
私が特に気になったのは、自分も持っているだろうに高橋の煙草を出させたシーンでした。
なんだかここにすごく引っかかって、巧って本当に良い人なのだろうかと思ってしまって。
東京から来た2人が、だんだんと自然に飲み込まれていくような印象を受けていました。

ラストの展開は解釈が本当に難しい。
けど、霧の立ち込めるあの場面は何となく現実ではないような気がしました。
そして撃たれた鹿の親子は何を表しているのか。巧はなぜあんな行動を取ったのか。
巧という人物の過去を考えると、より深い解釈ができそうな気がします。
冒頭の澄んだ木々の映像と、最後の陽が沈んだあとの黒々とした木々の対比に恐ろしさを煽られました。

答えはないけど、それがおもしろい。
こういう映画はみなさんのレビューをぜひ読ませてもらいたいです。
たくちゃ

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