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悪は存在しないのmyncoのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.9
冒頭、音楽と森のなかのシーンからすっかりやられてしまった。自然がもつ静けさと怖さが音楽からも伝わってきて鳥肌ものだった。

そういう話なのだろうと思っていたけど、グランピング建設の住民説明会のあたりから人間が持つ怖さも相まって「悪」とは、という視点を観客が考えさせられていくような展開。震える。

正義か悪か、どの視点から見るかで変わると思う。
実際、あの芸能事務所から来たふたりの立場に同情してしまう部分もあるし(車の会話劇最高におもしろかった)、田舎の暮らしに憧れる気持ちもわかる。
ラストは思いがけない展開を見せて終わったけど帰り道も帰ってからもずっとどういうことなのか考え続けている。おもしろい映画体験。

最後に、この映画が全国のミニシアターを中心に上映されている試み。わたしは賞賛したいと思っている。利便性の良いシネコンでの映画鑑賞ももちろん必要だと思うけれど、すこし足を伸ばしてミニシアターに行って映画に触れる体験をひとりでも多くのひとにしてもらえると、この国で衰退しそうな文化を残す力になるかもしれない。
ミニシアターは興行力が弱くて集客に影響が出ることも多い。しかも地方でも上映してくれているからシネコンに行きにくい地方在住者も楽しめる。映画好きのひとへの愛ある取り組みだと思う。
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