はちみつレモン

悪は存在しないのはちみつレモンのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
描きたかったことの、結末は突然知らされる。

衝撃のままに劇場を後にする。

「悪は存在しない」

その中で生きる人、やって来る人、行くこともない人。

電波の通じない森林の中はこわい。

私のための、話。みんなための、話。いろんな場所で生きる人たちの、話。


以前から'空間'と'(人間)関係'を作るのが上手いと感じていた濱口監督。さてはファシリテーター向き…?

地域と、人と、自然。
田舎に越してきたばかりのわたしに、プレゼントと言わんばかりの物語。
誰彼の言動のひとつひとつが自分ごとのようで胸を突いた。


何故そうなってしまったのか?
一つに限定しがたい要因が複雑に絡み合ってもはや特定する術はない。

現実世界は、過去の積み重ねの結果を映し出しているに過ぎないんだよ、
と言った恩師の言葉が思い出された。

何も知らず、ただ見ていることしかできない我々は、この世界の日常にしっかりと組み込まれている。濱口作品の映し出す生々しさは紛れもないこの世のものであるから。

胸が騒ぐ、安堵できない感じは
きっと何かを問われていて、それに心当たりがあるからみたいだ。

もう少し、ひとりで考えたい。