ツバサ

悪は存在しないのツバサのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

あっという間の106分。
もう少し他愛もない会話劇を観ていたかった。
「悪は存在しない」という強めのタイトルと「これは君の話になる」というコピーに込められた意味を終始考えながら鑑賞。
鑑賞後も考えさせられる訴求力がある。
冒頭から不穏な空気は流れてはいるけど、衝撃のラストだった。
色んな解釈があり受け手が感じたものがそれぞれの正解だと思う。
倒れ込みながらも動いているシーンをわざわざ入れたということは男は気絶させられただけな気がする。あの行動の理由を自分なりに考えてみた。
一つは、単純に下手に動くと花を危険にさらす可能性がさらに高まるから。
もう一つは、幼い子供であり、さらに愛する我が子であるとはいえ1人の人間であり、その1人の人間と動物が対峙している瞬間に生の尊厳を感じ(あるいは日頃からそういう死生観の持ち主なのかも)、そこに他者が介入してはいけないと思ったから。妻が亡くなっているとするならば、自然の中で命を落としたのではないか…少なくとも妻の存在がこの行動に何か関係しているのでは。。
どちらかで答えるなら、花は死んだんじゃないかと思う。でも個人的にそれはあんまり重要じゃない。

何が悪かはどの立場から見るかによる。
地域住民からみればよそ者による開発は悪。でもその住民たちも多少なりとも自然を切り拓いて暮らしている。自然界からみればどちらも悪。時に自然は残酷さを突きつけてくる。自然に生かされているがその瞬間は人間にとって悪だ。
上の方で水を流すと下に流れるように、全ての事物は影響し合ってバランスの上に成り立っている。
何かにとっての善は何かにとっての悪。
多面的にみればこの世に悪なんてものは存在しない。
ツバサ

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