いやぁーびっくりしましたよね。
「あー、なるほど。悪は存在するのか?ってそういう事、そういう映画ね」と飲み込みやすいところで終わっていきそうなところで、最後のアレ。
しかし、考えてみれば、濱口竜介はいつだって観客に挑戦する様に"違和感"を物語に滑り込ませてきた映画作家なのだ。
「ドライブマイカー」の岡田将生の意外な本性と独白。
「ハッピアワー」の真意を掴みかねるワークショップの講師の存在。
「PASSION」のいじめに対する言及。
充分にマスに受け入れられ、無難なヒットしそうな映画を作る事だっていくらでも出来そうなところ、変わらない濱口竜介としての揺るぎないこの作家性。
そして、毎度、新しい事にトライしており、本作も元々は石橋英子のライブ用映像から発展した作品という特殊性に映画としてのスリルが増す。
タイトルと、そのタイトルが登場するタイポグラフィ、唐突にブツギレになる劇伴と、どうしたってゴダールを引き合いに出したくなってしまうけれど、そんな作品を日本人の映画監督が作って、全国のミニシアターで連日満員御礼なんだから、これは痛快じゃないか。
この1週間いろんな人と、あの終幕の意味を、映画の台詞や演出のひとつひとつを語り合ったりするのが楽しかったし、明確な結論には当然いきつかない。
世界や自然、そして人間が時に不可解で捉え切れない様に、映画も割り切ったり括り切れない。
だから、不気味で可笑しくて、面白いじゃない？そんな風に思ったのが、本作の私の感想。
