NaokiAburatani

悪は存在しないのNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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アカデミー賞受賞した作品の監督最新作がホントにひっそりと配給されている事実に驚いたと共に、作中での芸能事務所の描き方に「監督は芸能界と何かあったのでは?」と邪推してしまった。実際著名な役者は(自分が知らないだけかもしれないが)全く出ていなかったように思うのだが、今作の結末のように真相は藪の中。

冒頭の下から森を見上げるショットや薪割り、水汲み、森を歩く等の日々の営みを見せるシーンと芸能事務所の二人の車内での中身のあるようでないような会話劇等とにかく長回しが特徴的な作品だった。それが飽きずに見ていられるのだから濱口監督は凄い。
登場人物はハッキリ言えば全員セリフが棒読みでお世辞にも演技が上手い訳ではないのだが、それでも住民説明会等の場面は最高に緊張感があって面白いし、風光明媚な自然はまるで気温や空気の匂い等が感じられそうな位の鑑賞体験が出来、監督の妙技を味わえた。
いかに名優と呼ばれる人を使っても大根役者に見せてしまう監督もいるのだから、やはり上の影響というのは全て下に降りてくるのだと実感。

上流の影響は下流へと必ず及んでいき蓄積される。これが万物の心理であるように思えた。
自然と人間のバランスというものも結局人間側の理屈だし、地方活性のそもそもの必要性や都会暮らしの方が限界性があるのではなかろうか、等など非常に考えさせられる内容だった。

父親が木を伐って森で娘と暮らしている、娘のこと忘れがち、娘を探す、ランダムに暴力を振るう、ラストのあれ、等などでコマ◯ドーっぽいのでは?と思っていたら某ラジオ番組でも同じ批評を聞けたので、思っていたのは自分だけではなかったことに少し笑った。

ラストのあれは様々解釈あるだろうが、自分の中では事故を装った確信犯的犯行に対する証拠隠滅と監督の芸能界への怒りをブツけた結果に思えた。
日常生活においての親子のスキンシップ(娘がチョコを食べさせてくれようとしているのに無視。娘が背中を蹴る。迎えに行くことに対する常軌を逸した忘れぶり。等)に感じた違和感に対する結果だったのでは、と思うが‥不気味な巧の深層心理と真相はやはり藪の中だった。
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