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悪は存在しないのcocoのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「悪は存在しない」
この映画のタイトルの解釈を永遠と考えられて、人の解釈を聞くとまた自分の解釈も変わりそう。
友達と話しながら深めていくのが楽しかった。

そもそも弱肉強食の自然の世界に、善と悪っていう概念はなくて人間が勝手に決めたもの。
だとしたらこの世界に悪は存在しない??

見ていると、都市に住んでいる側の人間としては板挟みされた事務所の2人に感情移入してしまう。
会議の時点では良い印象じゃなかった2人も、その2人の会話やバックストーリーを聞いていると、「悪い人じゃないじゃん」という気持ちになる。

そもそも最初の自然を見た時点で自分は、街に住んでいる側の人に感情移入をして、その人たちの目線で、2人を悪い人という気持ちで見ていた。誰かにとっての悪が自分にとっての善で、自分にとっての善は誰かにとって悪なのかもしれない。そういう意味では全ての人に共通した悪という存在はないのかもしれない。

ラストシーンで、オレンジの人がした事も彼にとってはきっと自分が思うその場で1番取るべき行動(善)だと思っていた。けど、たくみにとってそれは娘を守る手段として1番やってはいけないこと(悪)だった。
悪は存在しないかもしれない。けど自分の正しい善があるとすれば必然と悪は存在してしまう。

とくに対比がすごかった。
自然と都市
静かで雪を踏む音、水が流れる音が響く自然と常に何かの音が鳴り響く都市
シーンが変わった時に普段聴いてる都会の喧騒がうるさく感じてしまった。

全員が同じ方向を向いている会議、オンラインを利用したバラバラの会議
それぞれが同じ意見を持ってまっすぐに伝える説明会と、全く聞く耳を持たない社長とコンサルタントを前にそれぞれがバラバラの意見をもち違う方向を向いているオンライン上の画面に映る姿がすごく不自然で居心地が悪かった。

自然の怖さを知ってる人、知らない人
女性は水を汲んで車まで持ってく過程で自然で暮らす大変さ、手を怪我したことで自然の怖さを知った。そのため花ちゃんを探しにはいかなかった。1人で夕陽を見つめてる後ろ姿から綺麗な夕陽とは対照に流れ続けるアナウンスや、響くやかんの音など、広い自然を目の前に大きな不安感を感じた。

男性は薪を割った成功体験から、自分ならここでも暮らしていけるかも。という意識が生まれてしまった。だから花ちゃんを探しに出かけて行って結局、自然のバランスを崩してしまった。

生と死

「バランス」

家族のバランス
お母さんが写っている写真が定期的に映される。直接的な描写はなかったけど、このことが家族のバランスを不安定にさせて、娘のお迎えを忘れる、自分のことに没頭しているなど家族としての関係が崩れてしまった?

少しでも変わると全て壊れてしまうような自然界のバランスが、壮大で、でも脆くて、自分が気づかないうちにそのバランスを壊すかもしれないし、誰がどの立場にもなりうる。
コロナ禍っていう、都市のバランスを不安定にさせた環境が自然のバランスも崩していく。

広い自然に不安と映像美を感じて、木々を多く見せる横スクロールの画角と、車の後ろの車窓のカットがとても印象的だった。

見てよかった。見終わってからずっと考えてる
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