杏

悪は存在しないの杏のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
水挽町の美しい自然を淡々と描写している一方で、音楽がぶつ切りになったり静寂と喧騒の対比が多く不穏な空気感もあって何が起こるんだろうとソワソワしてました...

濱口監督らしい会話劇で、それを観ている観客側がクスクス笑ってる声を聞いているとミニシアターで映画を観ている感があってわたし好きなんです
煙草吸ってる社長が後ろの絵とシンクロしてる構図がお気に入り

煙突から出る煙と林の間から覗く夕焼け空が美しい、黛さんが町内放送を聞いているシーンが特に印象的
モクモクと湯気を立たせながらうどんを作ってるシーンも好きで、他にも雪景色や水など白が綺麗な映画だなと

説明会のときの高橋と黛は敵のように見えていたのに、車の中のリアルな会話を長めに見せることで観客に感情移入させているのが本当に秀逸

鹿は人を襲わない、けれど半矢の鹿や親鹿だったら襲うかもしれない
ラスト、その台詞が伏線となり鹿の親子と巧花親子が重なったような演出
人や自然、全てが自分勝手でもあるし全てがどうしようもなくしょうがないことでもあって、それがタイトルに繋がってくる
杏