カンタ

悪は存在しないのカンタのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

今ものすごい映像を見ているかもしれない。点数付けるのも正しいのか分からない。そんな気持ちになった。

ただそこにある自然とそれに依存する人間の生活を切り抜く。我々にとって写真やホームビデオがそうであるのと同じで、この映画が自然にとってその役割を担っているような気がした。

今作は、多くの映画に用いられているような空から地上を見下ろすショット(神様の視点)ではなく地面から天を(木を)煽るショットで始まる。自分という存在がちっぽけであると感じるのと同時に、威圧感のある自然に恐怖を覚える。そして「神」はいないのではとさえ思う。
→パンフで監督が「カメラを何かの視点の代わりには使用しない」とはっきり断言されていました笑

鑑賞中、僕は「悪は存在しない」という言葉を反芻し、どこに悪がないのかを考えました。それは暖かくもありそして時に冷酷な自然だった。そこに善悪は無くて、さらに神(救い)も存在しない。

突然ブツっと切れる劇伴。どこかしら不穏な雰囲気がこの映画全体を漂う。それ(死や終わり)はいきなり訪れる。

バランス。誰かの利己的な視点によるバランスではなく、超客観的な、自然による主観のバランス。人間はそのバランスを保とうとする力に抵抗する術を持たない。

最後のシーン、巧は自然の具現化だったのではないか。彼が自然を代弁している。人間が生きるために動物や植物を食うのと同じで、自然が生きるために人間を殺す。

死とはとても自然なものである。
カンタ

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