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悪は存在しないのピエロのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.4
なんとも言えない、不思議な不安に包まれる。
自分がどこにいてちゃんと立っているのか分からなくなる感覚。

前情報ほとんど入れないで前評判だけで乗り込んだんだけれども、あぁこの先も続いていくんだなぁという終わり方だった。体感80分くらいで2時間とは思えないほどあっという間で驚いた。
知らない土地の住民達とそこに軽々しく足を踏み入れる余所者という描かれ方だったか、そこに住むものとそれ以外の人間の立ち位置とか在り方みたいなものを考えさせられた。
最初のんびりとした山地で暮らす人々のドキュメンタリーのような形で進む物語なのかと思ったけれど、しっかり画を余すことなく繋げて、編集して映像として落とし込んでいる。
どこかの町で実際にある事柄なのだというのを自覚しつつ映像作品として楽しめる構成になっていると思う。
ロケ地がとても素敵な場所だからそのシーンもっと引きで欲しいとか思った笑
面白い視点でものを書く監督なんすだなーというのが伝わってきた。
スクリーンに映されるのは誰かの彼らの日常の一場面でそれを離れた各所から眺める。

冒頭、馴染みのない木々達のよく分からない長々しいワンカット。美しいといえばそうだが、普段とかけ離れた非日常にすっと溶け込めるかといえば否。それでもいつの間にか境界線が消えその場を俯瞰して見ている自分に気づく。
そんな不思議体験。これだから映画館で映画を鑑賞することをやめられない。
スクリーンから一歩出て現実を歩く時
少しの物足りなさや帰りたくない衝動を消化できないままチラシを手に家に帰る。

行き場がなくなった鹿たちは何処へいくんだろう?
結局"悪"とはなにか不確かなまま
久々に胸がザワザワしたな〜
長野の山々を見るだけで癒された。
薪を割るシーンはしたこともないのにスカッとした。
汚れた水は下に流れる
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