千里

悪は存在しないの千里のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

トレイラーを観てあまり好みではなさそうに感じたのでスルーしたものの、世間の高評が気になって鑑賞。これはちょっとびっくりするくらいの面白さ!事業による開拓と地域住民の対立という構造や行く末が気になる面白さが担保されている中、ラストの衝撃の展開に持って行かれた。

濱口監督作はこれまでに「寝ても覚めても」「スパイの妻」「ドライブ・マイ・カー」「偶然と想像」の4作品は観ているが、どれもそこまで刺さらず(「寝ても覚めても」がまずまずだったかなといった感じ)な感じだったのだけれど、本作にはやられた。

序盤こそ自然と一体となりながら暮らしているあの地域での生活をこれでもかというくらいに定点で丁寧に見せてくれるので、正直所々寝落ちしてしまった箇所も...笑 そういった生活を送っていることを見せた上での、グランピング計画の説明会パートから面白さがグンと上がってくる。

補助金を申請して新規の事業開拓をしたい芸能事務所と、グランピング場が出来てしまうことで生活の障害となるような様々な問題に直面することを指摘する地域住民たち。この対立構造と、地域住民の意見にも耳を傾けていく事業計画をしている会社の担当者2名の関係性が面白い。またらこの計画の行末が気になり終盤まであっという間に楽しめた。

そしてラストの衝撃の展開。これぞ映画だなぁ...と思わされる圧巻の面白さ。解釈については色々ありそうだけど、巧と花、延いては地域住民は鹿だったってことなのかな...?


以下、色んな人の感想や解釈を読んだり聴いたりして自分の説は的外れなのかもしれないと思いつつ、巧と花や地域住民が鹿だったんじゃないか説に至った経緯を書いてみたいと思う。

グランピング施設が出来ることで鹿の通り道がなくなることに対する不安な発言や、鹿が通るようなところに人が来たがるのかと暗に作らないでほしいことを願っているかのような発言があったこと。

説明会にて長の上に住むものには下のものの生活を考える義務がある的な発言。人間界の都会と田舎ともとれるけど、都会が発展して行き場を失った鹿の集まりであり、自然界の掟のことを言ってるともとれるのかなと。

巧と花の普段の生活を見ても、どこか野生味のある生活をしている気がする。巧は水を混んだり、薪を割ったり。花もいつも1人で自然の中をウロウロ歩き回ったりしていたり、花のシーンで鹿の足跡が映る箇所があるのだけど、あれは花の足跡だったことを示しているのではないか、とか。

最後に手負の鹿の親子に相対する花は、鹿たちとコミュニケーションを取っていたのではないか?巧が高橋を殺害したのは、その現場を見られてしまったから?花が倒れたのは人の姿で鹿とコミュニケーションを取ることで力を使ったから、とか。

そんな風に見ながら思っていたのだけど、自分で書いてても色々とツッコミどころがあるので的外れな解釈だとは思う。
千里

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