シノミー

悪は存在しないのシノミーのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2
悪は存在しない

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自然が豊かな高原が広がる水挽町。
そこに暮らす巧(#大美賀均)と娘の花。
薪を割り、湧水を汲み、慎ましく生活する日々を過ごしていたが、ある日、町にグランピング施設を建設する計画が東京の会社から説明される。
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何とも形容し難い、感性に訴えかけられるような作品でした。

あまり言葉で装飾するような作品ではないと思うけれど、終始美しかったね。

定点カメラでの撮影が多かったように思えて、それがより大自然をリアルに捉えていたように思えた。

様々な木々たち、雪、水の流れや土の色、空の青さとかそれらの音が体感できる、デジタルデトックスしたかのような感覚。

話の内容的には、郷に入っては郷に従え的な感じではあって、戦後の土地の開拓により生まれた集落の資産でもある水を汚すような真似をすれば反対されるに決まっている。
だからこそ、真摯に向き合って時間をかけるべき案件なのだろうけど、会社は補助金目当てなので、それが裏目に出るという悲しい現実。

途中から、担当の2人が主人公だなって思えるほど、頑張っていたね。

ラストは、これは本当にもう色々と考察できそうだけど、個人的にはシカだったという説が誰の考察も読まずに自然に出てきた感想かな。

これは比喩なのだけど、冒頭からの会話で木の種類や鳥の羽について語られる描写があり、それ以外は特に触れられていない。さらに鹿の通り道を無くすという話に難色を示した。

もちろん、人間的な会話や仕草はあるけれど、あまりに自然に生きている。

あの状況で鹿から逃げられずに、接近していたこと。部外者に目撃されたので、これ以上はもう一緒にいられないとしたのか。

正解は明確化されないにしても、考える余地がある。
それが嫌いな人もいるだろうけど、そこまで気持ち悪さはなかった。ただ唐突すぎたあの展開は多少不自然にも思えたかな。

それでも楽しめたよ。
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